物語を生む仕掛け【新人日記リレー】

こんにちは。デザイナーの清水です。
山口くんの予定でしたが、多忙のため代打いたします。

5巡目のテーマ、「仕事をしていて役に立った考え方・経験」についてお話しします。
しかし改めて何が役に立ったかと言われてみると、明確に言えるものはないですね……。色々なものが少しずつ役に立っているのだとは思いますが……。
なので、役に立っているものではなく、役に立つんじゃないかと期待しているものについてお話ししようかと思います。

最近私は社員同士で時々TRPGをプレイしています。TRPGというのは「テーブルトークロールプレイングゲーム」の略で、用意されたシナリオの中で、プレイヤーたちが各々用意したキャラクターたちとして振る舞い、ダイスを振って冒険、または探索していくゲームを指します。

TRPGにはプレイヤー(PL)の他にゲームマスター(GM)と呼ばれる役割があり、GMはシナリオの準備、PLに対する適切な情報の提示、ダイスの結果に応じたゲーム展開の管理等の業務を担います。私はしばしばこちら側の役割も担当しているのですが、これは小規模なゲーム制作でもあるなと感じています。

現代はオンライン上でTRPGをプレイできる環境がかなり整っており、こだわれば画像や音楽などをたくさん用意して、リッチなビジュアルやBGMを持った場を作ることも可能です。
特によく出来たシナリオにおいては、物語に引き込むための仕掛けや、盛り上がる山場などが用意されていることが多いです。狙った効果を生むために最適な背景画像や音楽があることで、よりこれらの仕掛けを活かすことが出来ます。
オンラインセッション用の部屋作成を通じて、ただ美しいグラフィックを目指すだけではなく、どのようなゲーム体験を作りたいのか、という視点が鍛えられるのではないか、と期待しています。

もちろんあくまで趣味ですから、仕事の役に立つことばかりを念頭に置いてはいませんが、どこかで響いてくると嬉しいですね。

 

ではせっかくなので、TRPGのココがすごい! といった話をしようと思います。
先程はTRPGにおけるグラフィック、BGMの機能についてお話ししましたが、もちろん「テーブルトーク」ですから、トークが重要です。ですので、ここからはトークによって生み出される面白さについて考えていきましょう。

TRPGをプレイするにあたって何を求めるのか、ということについては、人によって様々なスタンスがあると思いますが、昨今日本でTRPGをプレイしている人々の中には、ある種の創作行為としてTRPGを楽しんでいる層があると思います。魅力的な人物やドラマを生み出したいという層ですね。

共同創作のあり方の一つとして、リレー小説などが挙げられます。私もやったことがありますが、何の指標もなく進んでいくため、物語が空中分解することがしばしばあります。
TRPGを一種の共同創作ツールであると捉えた場合、TRPGの持つ2つの仕掛けがよい効果をもたらします。
その2つの仕掛けというのが、「シナリオ」と「ダイス」です。

PLはシナリオの内容を知りません。なので、自分が作ったキャラクターの性格などを踏まえながら、その場その場で即興的に振る舞うことになりますが、シナリオの存在によって、完全な即興ではなくなります。
GMが適切にPLたちを導きながらシナリオの大筋に沿ってゲームを進行させていく中で、PLたちは自身の振る舞いを決定していくことになります。そのため、物語が空中分解することはありません。しかし同時に、そのPLたちでなければ生まれなかったであろう物語が紡がれていくことになるわけです。

完全な自由の中で創作するよりも、ある程度のレールが敷かれていることが、かえって人々の想像力を引き出し、豊かな物語を作ることになるのだと思います。

もう一つの仕掛け、「ダイス」は、物語に偶然性を作り出します。
単に創作がしたいのであれば、シナリオに沿って即興劇をやれば、それがTRPGでなくてもいいんじゃないかという疑問があり得ると思います。もちろんそれでも面白いものを作ることは出来ると思いますが、ダイスは誰一人予想していなかった展開を生み出す大きな助けになります。
TRPGでは「ダイスロール」と呼ばれる、特定の行動をするにあたって成功したかどうかを決定するための判定が存在します。ダイスを転がして、その結果によって行動の成否が決まるわけですが、これはPLにもGMにも操作が出来ない、完全な偶然です。

ダイスがない場合、「こういう展開になったらアツい」とか、「こういう結果が自然である」といった考えに概ね沿った形で物語が進むことになると思いますが、どこか予定調和的になってしまう場合もあるかもしれません。
そこでダイスの完全なランダム性が活きてきます。誰一人これを操作出来ないからこそ(もちろんGMの裁量などによって多少確率を調整することは出来ますが、最後の最後は出目次第です)、「こうなってほしい」を大いに裏切ったり、反対に一番成功してほしい場面で見事成功したりするといった展開が大きな価値、ドラマを生むことに繋がるのです。

自分の頭だけでは到底作られ得なかったであろう展開が、小さなサイコロ一つで生み出されるわけですね。
望んだ結果とは真逆の結果が出た場合、PLたちは納得のいく物語性をそこに求め、補完します。その結果、元々考えていた収まりのいい展開よりもむしろ面白いものが出来上がることもあるのです。

そういった仕掛けの中で、リアルタイムに唯一無二の物語が作り上げられていく過程の目撃者に、当事者になるということが、TRPGの面白みの一つでしょう。
昨今はYoutube等の動画配信サービスにおいてTRPGが配信コンテンツの一つになっていますが、それはこの面白みを観客という立場でも楽しむことが出来るからでしょうね。

以上、TRPGのココがすごい! でした。しかしTRPGには他にも色々な楽しみ方があります。TRPGには様々なゲームシステムがありますが、ゲームシステムが変わると面白さの種類が全く変わることもあり、そこも面白いところです。よりボードゲーム的な楽しみのあるシステムやシナリオも存在します。どんな需要にもある程度応えられる懐の広さもTRPGのいいところですね。

今回のブログ担当は清水でした。次回担当は山口くんです。お楽しみに!